『この学校の七不思議を解明してください』
そんな内容の紙が、お悩み相談BOXに入っていた。
「学校の七不思議?」
私は首を傾げる。
放課後、いつものように地学準備室に集まった私たちお悩み解決部は、一枚の相談メモに目をぱちくりさせていた。
「この学校にそんなのあるんだ?」
この中学校に通い始めて、もう二年と半年くらい経つけれど、七不思議があるなんて話ははじめて聞いた。
「記名はあるか?」
蓮詞に言われてメモを裏表引っくり返してまわして見てみたけれど、それらしきものは見当たらなかった。
「名前は書いてないみたい」
「そうか。ならいたずらかもしれないな」
「え、そうなの?」
「学校の七不思議の解明なんてくだらないだろう。そもそも七不思議の存在によって、なにか困ることがあるのか?」
蓮詞の言葉に、うーんと首をひねる。
たしかに私たちの目的は、困ったひとの助けになることだ。
学校の七不思議を解明してほしいってことだけど、このひとは解明に困っているのかな?
「でも、せっかくお悩み相談BOXに投稿してくれたのに、無視はできないよ」
私がそう言うと、五月くんが立ちあがる。
「だな!わざわざ相談してくれたんだ、解明するぞ!」
「本気か?噂話の程度でしかないものを解明だなんて」
「本気も本気!もしかしたら相談してくれたひとが困ってるかもしれないだろ?それなら俺たちがなんとかしなくちゃな!」
「私もそう思う!」
私が五月くんの意見に賛同すると、蓮詞は眉間にしわを寄せて椿妃ちゃんに意見を求める。
「北條は……」
「桜彩ちゃんと一緒ならどこへでも行きます!」
「だよな……」
相変わらずの椿妃ちゃんの返事に、少し呆れたようにため息をつきながら蓮詞も立ち上がった。
「じゃあ行くか。学校の七不思議の解明に」
「おー!」
私たちは手を天高く突き上げた。
は、いいものの、地学準備室を出てすぐ私たちの足は止まった。
「七不思議の解明って、何をすればいいんだ?つーか俺、転入してきたばっかでこの学校の七不思議知らないや」
「私も知らないんだよね」
「私も知りません」
そうして三人の視線は、蓮詞へと集まる。
蓮詞はまた小さくため息をついて、眼鏡をくいっと上げた。
「この学校の七不思議は全部知っているつもりだ。1から順番にまわって行こう」
「さっすが蓮詞!記憶関係はやっぱり蓮詞だねぇ」
褒めたにも関わらず、蓮詞は私のおでこをちょんと小突く。
「まったく、お前らはすぐに突っ走るからな。なにかあったら頼むぞ、未来予知」
「うん!がんばってみる!」
そうして私たちは校内を歩き始めた。



