そのお悩み、私たちの能力で解決します!



「私がラブレターを渡したい相手は、未来さんです」


「………………え?ええええええ!?!?」


 私はあまりの驚きに、目をぱちくりさせる。

「私の想い人は、ずっと未来さんだったんです」

 北條さんはにこりと微笑む。

「え?え?どういうこと?」

 うまく事態がのみこめず、私は目を瞬かせるばかり。
 私と同じように目を丸くする五月くんの横で、蓮詞がため息をついた。

「やっぱりそうか」
「え?蓮詞、気がついてたの?」
「昨日の話や様子から、そうじゃないかとは思っていた」
「どういうこと?」
「北條の話を聞いた時、どこかで同じような話を聞いたと思っていた。それは、桜彩から聞いていたんだ」
「え?私?」

 そんな話したかな?と私は首を傾げる。

「小学五年生の十月七日水曜日、朝八時七分。桜彩は教室に入り、俺の元へやってくるなりこう話し出した。『昨日、困ってる女の子がいたの!』と」
「あれ?そうだっけ?」
「そうして桜彩が話し出した内容は、昨日北條から聞いた内容と同じだった。からかうような言葉を投げつける男子をかばうように追い払ったと」

 蓮詞は掛けている眼鏡をくいっと上げる。

「さすが蓮詞、記憶力いいね!」
「ふと時計を見て、それから黒板の日付を見たところで、ちょうど桜彩が教室に入って来たんだ。一度見たものは忘れないから、見たものと桜彩のエピソードが結びついて記憶していたみたいだ。それに昨日、地学準備室にきた桜彩を見て、北條はかなり動揺していたからな」
「そうだったんだ……って!蓮詞に感心してる場合じゃなかった!」

 私は改めて北條さんへと向き直る。

「えっと、北條さん。私、そのときのこと、あまり覚えていなくて……」
「はい、いいんです。昨日話した時から、きっと覚えていないのだろうなぁ、とは思っていたので」
「ごめんね……」
「いえ!未来さんが謝ることなんてなにもないです!ただ私はあの時のお礼と、自分の気持ちを伝えたかったんです」

 優しく微笑む北條さんから、私はラブレターを受け取る。

「それに、やっぱり未来さんは私が好きになった未来さんのままでした」
「え?」
「いつも一生懸命で誰に対しても真摯で真剣で。そういう未来さんだから私は好きになったんだと思います」

 急に褒められて少し照れくさくなる。

「えへへ、そうかなぁ……」
「それに、私の力のことも、馬鹿にしたりせず、かっこいいって言ってくれました!」
「うん!それはそうだよ!北條さんの力持ち、かっこよかったもん!」
「そうやってさらっと私のコンプレックスを包みこんでくれるところも好きです」
「ふえっ!?」

 北條さんはじりじりと私に距離をつめて来る。

「未来さん、どうか私の気持ちを受け取ってもらえないでしょうか……?」
「え、ええっと?」

 それって、私はどうしたらいいんだろう?
 私が困っていると、五月くんが間に入ってくれた。

「まぁまぁ、一旦落ち着けよ。桜彩も戸惑ってるみたいだしさ、とりあえずここは、お友達からはじめたらいいんじゃね?」
「お友達……!」
「北條さんが良ければ、私も北條さんとお友達になりたいよ!」

 そう言うと北條さんは嬉しそうに私の手を取った。

「はい!もちろん!お友達からでも大歓迎です!これからも、仲良くしてくれるんですよね?桜彩ちゃん?」
「もちろんだよ!椿妃ちゃん!」

 私は椿妃ちゃんの手を取って笑みを返す。

「それと、なんだけど」
 と私は言葉を続ける。


「椿妃ちゃん、よかったらお悩み解決部に入らない?」


「え?」
「私たちね、みんなより少し不思議な力を持っているから、この力をひとの役に立てたいね、って話してて。なにかあったとき、椿妃ちゃんの力があったら助かるなって」
「入ります!!」

 私の言葉尻に被せるように、椿妃ちゃんはOKの返事をした。

「いいの!?」
「はい!もっと桜彩ちゃんと一緒にいたいので!」
「動機が不純すぎる」

 ぼそっとつぶやいた蓮詞の言葉を聞き流した椿妃ちゃんは、嬉しそうににこりと笑った。


「これからも、末永くよろしくお願いしますね?」