夕陽に照らされながら、三人で並んで帰る帰り道。
はじめての依頼を無事こなせたことに、ほっとしながら歩いていると。
「危ないっ!まーくんっ!!」
女の人の金切り声が聞こえて、私たちは振り返った。
そこには、ボールを追いかけるようにしてそのまま道路に飛び出そうとしている、小さな男の子の姿があった。
それを見た瞬間、私の脳内にまた鮮やかな映像が流れ出す。
「このままじゃ、ひかれちゃう!」
今、車の姿は見えないけれど、急に角から曲がってくる車が映像に見えた。
それはきっと5秒後に起きる未来。
私は反射的に駆けだす。
しかしそれよりも早く、隣にいた五月くんがものすごいスピードで男の子の方へと走り出した。
それは目にも止まらぬ早さで、私なんかじゃ到底追いつけないような速さだった。
五月くんはあっという間に男の子のところまで行くと、男の子とボールを抱えて、歩道へと戻ってくる。
するとすぐにすごい勢いで車が曲がってきて、そのまま直進して通り過ぎて行った。
私はふたりの無事を確認して、ほっと胸をなでおろす。
男の子と男の子のお母さんとなにか少し話していた五月くんは、こちらに戻ってくると安心しきったようにへらりと笑った。
「はー、マジでびっくりしたぁ……。間に合ってよかった!」
「すごいよ、五月くん!男の子も無事でよかった!」
「ほんとな!桜彩が教えてくれたおかげだ。車の影がなかったから、ちょっと油断してたけど、ダッシュで助けに行ってよかったよ。ありがとな!」
「役に立てたならよかった……って、五月くん!腕から血が出てるよ!」
「え?ああ、すげー勢いで歩道に戻ったときに、少しガードレールにぶつかったんだよな。それで切れちゃったのかも。ま、これくらい平気平気!」
五月くんはいつものように明るく笑う。
ほっとしているはずなのに、何故だか胸がざわざわした。



