レナとまほうの歌のプリンセス~いっしょに歌えばみんな友だち!~

 ティータイムが終わり、トトがティーセットを片付けている時、レナはふと思い出したことがありました。

「ねえカノン。初めて会った時に歌っていたのは何の曲?」

 カノンはちょっと恥ずかしそうに目を泳がせます。

「あれは……カデンツァ王国に伝わるまほうの歌。王家の者があれを歌うことで王国は平和に保たれるの。だけど……わたくしひとりじゃ、うまくいかなくて」
「どうして?」
「あれは、心が通じあっている大切なひとと歌わないと力を発揮できないの」
「あっ……」

 そこでレナはトトに呼ばれた理由を思い出しました。
 ひとりぼっちになったカノン姫が歌えなくなってしまったことで、歌の力が弱まって、カデンツァ王国が消滅してしまうかもしれません。それが今回の旅のきっかけだったのです。

「メロディも、歌詞もきちんと覚えているわ。でも、どうしても歌にならないの……私がこうしている間も、だんだん王国の力が弱くなっているのを感じるの。レナも見たでしょう?」

 レナは王国を覆う、どんよりしたくもり空としょんぼりと元気の無いお花畑を思い出しました。確かに、あれがどんどん進んでいったら王国がボロボロになってしまいそうです。

「わたくしがどうにかしないといけないのに……そう思うと不安でいっぱいになって、泣きたくなってしまうの。でも泣いたからって解決しないのもわかってる。どうしたらいいの、レナ。助けて……!」

 カノンは両手で顔を覆って泣き出してしまいました。レナはとっさに抱きしめます。

(初めて会った時にツンツンして見えたのは、不安だったからなんだ。ひとりぼっちになって不安で、泣きたいけど王国を背負ってる責任があるから泣けなくて……)

 それは自分と同じくらいの年の女の子が背負うには大きすぎるプレッシャーです。

(代わってあげることはできなくても、分け合うことなら、できる)

 レナは優しくカノンの背中を撫でました。

「ねえカノン、まほうの歌ってどんな歌なの? 私に教えてくれると嬉しいな」
「ええ……」

 カノンはトトが差し出したハンカチで涙を拭うと、ゆっくり歌い始めました。

 ララ♪ ル……ララ…………ルル…………♪

 途切れ途切れでしたが、きれいな歌声です。初めて聞くメロディでしたが、レナにはどこかなつかしく聞こえます。

 ……ル、ルル…………♪

 気づけば、レナもカノンの後から真似をして歌っていました。
 カノンがびっくりしたまなざしでレナを見つめています。レナは歌いながらカノンにうなずき、声を合わせていきました。
 カノンひとりの歌声もきれいなものでしたが、同じ音をレナが合わせることで深みが増して響きあっていきます。

 ラララ……♪ ラ、ラ、ランラララン♪

 ふたりはいつしか手を取り合って歌っていました。
 カノンはもう、泣いてはいません。ちょっぴり照れくさそうに、けれど誇らしげにレナとの合唱を楽しんでいるようでした。

(やっぱり、カノンは笑っているほうがいいな)

 するとどうしたことでしょう。カノンとレナの体が、虹色に光り出したのです!