レナとまほうの歌のプリンセス~いっしょに歌えばみんな友だち!~

 トトが夕やけ空に楽譜の橋を描きました。これはカデンツァ王国とレナの世界を繋ぐ橋。
 とうとうお別れの時間です。
 
「やっぱり……さみしいわ。せっかくお友だちになれたのに、はなれなきゃいけないなんて」
「カノン……」
「わたくし、またひとりぼっちになってしまうのね」

 目じりに浮かんだ涙を拭ったカノンはしゅんと肩を落としてしまいました。
 レナはたまらず、カノンの手をぎゅっと握ります。
 
「また会いに来るよ。歌えば楽譜の橋はかかるもの」
「そうよね……待ってるわ」

 レナの励ましにもカノンはうかない顔です。
 するとそこへ、トトがぴょんぴょんと跳ねながら駆けてきました。

「カノン姫! アルトさまからお手紙が届いていますよ」
「まあ、アルトが!?」

 おどろいたカノンの声がはずんでいます。封筒を開けるのももどかしく便せんを取り出すカノンをレナはまじまじと見つめます。
 
「ふふ、レナにはカデンツァの文字は読めないわね。読み聞かせてあげるわ」
「いいの?」
 
 大切なアルトからの手紙をレナにも読ませてくれる優しいカノンは、ちょっぴり誇らしげにほほえみました。
 
「もちろん。じゃあ読むわね。“カノン姫、お元気ですか……」

 アルトからの手紙は、引越した先の景色がきれいなことや、初めて食べたおいしいもののこと、まだまだ知らない歌があることが書かれていました。
 
「“カノン姫、新しいお友だちはできましたか?”」
 
 そう読み上げたカノンは大きく頷いてレナにウィンクしました。
 
「“今度、カデンツァ王国に遊びに行った時には、ぜひカノン姫と、新しいお友だちとも歌を歌いたいです。楽しみにしていますね。それではお元気で”」
 
 読み終えたカノンは便せんをていねいに折りたたんで封筒にしまいます。トトにそれを預けると、ぱちりと手を合わせました。
 
「そうだわ、アルトに手紙を書きましょう。レナのことを紹介するの。私のもうひとりのステキなお友だちのこと、アルトにも知って欲しいから!」
「本当? 嬉しい! じゃあ私は、アイネちゃんにカノンのこと、トトのこと、カデンツァ王国でのいろんな思い出を伝えるね。きっとアイネちゃんもここに来たくてたまらなくなるよ!」

 思いついたステキなアイディアにふたりともわくわくが止まりません。
 そんなふたりをトトはにこにこと見守っていました。
 
「おふたりとも、次に会う時にはまたお友だちが増えそうですね」
「あっ……そうだね!」
 
 初めはひとりぼっちだったレナ。それがカデンツァ王国でカノンと出会い、お友だちになりました。
 まだアルトには会ったことはありませんが、カノンのお友だちならきっとすぐに仲良くなれそうです。
 
「わたくしとレナからお友だちの輪が広がっていくのね。みんなで歌を歌ったら、どんなハーモニーになるのかしら」
「うーん……わからないけど……でも、とっても楽しい気持ちになれると思うよ!」

 そう言って笑ったレナに、カノンも頷きました。