「はあ……」
どんよりしたくもり空が今にも泣き出しそうなある日の午後。レナは学校からの帰り道をひとりで歩いていました。
(今日もうまく話せなかったな……)
レナの学校ではクラス替えがあったばかり。一番の仲良しだったアイネちゃんとは別のクラスになってしまいました。
今のクラスでがんばって誰かに話しかけようとしても、みんなそれぞれ別にお友だちがいるようで、うまく話が続きません。
(アイネちゃん、どうしてるかな。また一緒に歌を歌いたいのに……)
レナとアイネちゃんは歌が大好きです。いつも登下校では歌を歌っていました。
アイネちゃんのことを思い浮かべながら歩いていると、どんどん顔がうつむいて泣きそうになってしまいます。
「いけない、泣いちゃダメよ」
ぱっと顔を上げたレナはアイネちゃんとよく歌っていた歌を口ずさみます。
(こうしていれば、さみしくないもの)
~ル……ララ♬、ル…………♪~
だんだん元気が出てきました。やっぱりレナは歌うことが大好きなのです。
公園の近くまで歌いながら歩いていると、花壇のあたりで何かが動きました。
(なんだろう。ネコちゃんかな?)
寂しさも忘れて、ドキドキしながら公園に入ってみます。すると、長い耳をぴんと伸ばしたもふもふがレナに飛びついてきました!
がさがさ……ぴょーんっ!
「きゃあっ!?」
「今の歌声はすばらしい! キミが歌っていたのかい?」
「う、うさちゃん?」
もふもふしたものはウサギでした。でも普通のウサギじゃありません。
頭には大きなベレー帽。長い耳にはイヤリングがゆらゆらゆれて、まるで音楽の授業で習った8分音符みたいです。
「ボクをそんじょそこらのウサギと一緒にしてもらったら困るな! ボクはトト。カデンツァ王国のスゴ腕コンサートマスターだよ」
「うさちゃんがしゃべった……」
びっくりするレナを置き去りに、トトはおしゃべりを続けます。
「ボクらのカデンツァ王国は音楽の力で生まれ、成り立つ国なのさ。王様から赤ちゃんまで、みんながいつも歌ってる。メロディにあふれるとっても楽しい国だって有名なんだよ」
「みんなが歌っているの? それってステキね!」
そう言われては歌が好きなレナも、まだ見ぬカデンツァ王国に対する興味がむくむくと湧いてきます。
トトはほこらしげに胸をはりました。長い耳につけたイヤリングがリンと鳴ってきれいなハーモニーを奏でます。
「そうだろうそうだろう! 特にカノン姫の歌はみんなが聞きほれるんだ。聞いているだけで幸せな気持ちにしてくれるなんて、さすがはカノン姫〜! と評判のステキなお姫さまだよ」
「カノン姫? お姫さまがいるの?」
「そうさ。でも……」
そこでトトの耳がしゅんと折れました。どうやらワケありのようです。
「だいじょうぶ?」
「うん……やさしいね。やっぱり、キミならもしかして……ねえキミ、名前は?」
「私はレナよ」
トトはピンと耳を立てました。そして深々とおじぎをします。
「レナ、お願いします。カノン姫のお友だちになって、カデンツァ王国を救ってください!」
どんよりしたくもり空が今にも泣き出しそうなある日の午後。レナは学校からの帰り道をひとりで歩いていました。
(今日もうまく話せなかったな……)
レナの学校ではクラス替えがあったばかり。一番の仲良しだったアイネちゃんとは別のクラスになってしまいました。
今のクラスでがんばって誰かに話しかけようとしても、みんなそれぞれ別にお友だちがいるようで、うまく話が続きません。
(アイネちゃん、どうしてるかな。また一緒に歌を歌いたいのに……)
レナとアイネちゃんは歌が大好きです。いつも登下校では歌を歌っていました。
アイネちゃんのことを思い浮かべながら歩いていると、どんどん顔がうつむいて泣きそうになってしまいます。
「いけない、泣いちゃダメよ」
ぱっと顔を上げたレナはアイネちゃんとよく歌っていた歌を口ずさみます。
(こうしていれば、さみしくないもの)
~ル……ララ♬、ル…………♪~
だんだん元気が出てきました。やっぱりレナは歌うことが大好きなのです。
公園の近くまで歌いながら歩いていると、花壇のあたりで何かが動きました。
(なんだろう。ネコちゃんかな?)
寂しさも忘れて、ドキドキしながら公園に入ってみます。すると、長い耳をぴんと伸ばしたもふもふがレナに飛びついてきました!
がさがさ……ぴょーんっ!
「きゃあっ!?」
「今の歌声はすばらしい! キミが歌っていたのかい?」
「う、うさちゃん?」
もふもふしたものはウサギでした。でも普通のウサギじゃありません。
頭には大きなベレー帽。長い耳にはイヤリングがゆらゆらゆれて、まるで音楽の授業で習った8分音符みたいです。
「ボクをそんじょそこらのウサギと一緒にしてもらったら困るな! ボクはトト。カデンツァ王国のスゴ腕コンサートマスターだよ」
「うさちゃんがしゃべった……」
びっくりするレナを置き去りに、トトはおしゃべりを続けます。
「ボクらのカデンツァ王国は音楽の力で生まれ、成り立つ国なのさ。王様から赤ちゃんまで、みんながいつも歌ってる。メロディにあふれるとっても楽しい国だって有名なんだよ」
「みんなが歌っているの? それってステキね!」
そう言われては歌が好きなレナも、まだ見ぬカデンツァ王国に対する興味がむくむくと湧いてきます。
トトはほこらしげに胸をはりました。長い耳につけたイヤリングがリンと鳴ってきれいなハーモニーを奏でます。
「そうだろうそうだろう! 特にカノン姫の歌はみんなが聞きほれるんだ。聞いているだけで幸せな気持ちにしてくれるなんて、さすがはカノン姫〜! と評判のステキなお姫さまだよ」
「カノン姫? お姫さまがいるの?」
「そうさ。でも……」
そこでトトの耳がしゅんと折れました。どうやらワケありのようです。
「だいじょうぶ?」
「うん……やさしいね。やっぱり、キミならもしかして……ねえキミ、名前は?」
「私はレナよ」
トトはピンと耳を立てました。そして深々とおじぎをします。
「レナ、お願いします。カノン姫のお友だちになって、カデンツァ王国を救ってください!」


