七月二十八日、ローカル放送局スタジオ。
　 海守り隊の五人は、局の朝の情報番組に生出演するため、控室で打ち合わせをしていた。
　 「本当に生放送なんだな……」稜が落ち着かずに足を揺らす。
　 「緊張するなら深呼吸しなさい」玲菜が注意しつつ、自分も資料を抱えて緊張していた。
　 番組のテーマは〈地域と未来を守る若者たち〉。亮佑が作成した地質模型と津波被害の予測図、梨奈の用意したプレゼン資料、そして大河の人望による町内会の後押しが合わさり、取材が実現したのだ。
　 スタジオに入ると、司会者が明るく迎えた。「今日は特別なゲストとして、海守り隊の皆さんに来ていただきました！」
　 まず梨奈が、掘削による危険性を簡潔に説明する。論理的で分かりやすい語り口に、スタッフが頷く。続いて稜がギターを抱え、即興で〈海を守ろう〉という歌を披露すると、スタジオは和やかな空気に包まれた。
　 大河はしっかりと視聴者に向き直り、言葉を選んで話した。「僕たちは、この町と未来を守りたいだけです。そのために声を上げました。どうか、無関心にならないでください」
　 放送が終わると、SNSや電話で多くの反響が寄せられた。署名協力の申し出や「一緒に考えたい」という声も増え、海守り隊の活動は一気に広がりを見せた。
　 凪桜は控室で腕輪にそっと触れる。「私たち……ちゃんと届いたよね」
　 そのとき、柔らかな風が吹き抜け、腕輪が淡く光った。まるで汐里が微笑んでいるように。