八咫烏ファイル


【金虎開発ビル・1Fオフィス】
滝沢と王の銃撃戦が始まった
ドォン!ドォン!ドォン!
けたたましい銃声が破壊されたオフィスに響き渡る
滝沢はひらりとデスクの影に身を隠す
王の撃った弾丸がデスクの天板を木っ端微塵に砕いた
王は分厚い大理石の柱の影から滝沢を狙う
滝沢は床を転がりながらリボルバーで応戦した
弾丸が大理石の柱に当たり火花を散らす
二人はオフィスデスクや椅子柱を巧みに利用し
目まぐるしく位置を変えながら撃ち合う
それはまさにプロ同士の死闘だった
やがて戦いは膠着状態に入る
滝沢は分厚い壁に背中を預けていた
壁の反対側には王がいる
互いに姿は見えない
王もデスクの影で身を守り次の手を考えている
滝沢はそのわずかな時間で懐からスピードローダーを取り出した
そして愛用のリボルバーに音もなく6発の弾丸を再装填する
滝沢は壁の端まで静かに移動した
そして王がいるであろうオフィス側の横の窓ガラスを見る
割れずに残っていたそのガラス
そこに王の姿がぼんやりと映っていた
だが滝沢と王の直線上には今滝沢が背にしている壁がある
直接は撃てない
滝沢の視線がガラスに映る王のそのわずか下の位置に向けられた
そこには巨大な業務用の金庫が置かれていた
滝沢はリボルバーを構える
そしてその金庫に狙いを定めあえて照準をわずかにずらしながら引き金を引いた
4回連続で
ドォン!ドォン!ドォン!ドォン!
キンッ!キンッ!
銃弾が分厚い金庫の鋼鉄の表面に当たり火花を散らしながら跳弾する
計算された角度
「ゔぁ゙っ!」
壁の向こうから王の苦悶の声が聞こえた
跳弾した二発の弾丸が王の足と肩に命中していた
今だ
滝沢は壁から飛び出した
そして王への間合いを一気に詰める
王はうずくまりながらも最後の力を振り絞り滝沢に銃口を向けた
そして引き金を引く
ドォーン!
だがそれは王の銃声ではなかった
滝沢の方がコンマ数秒速かった
滝沢が撃った一発の弾丸
それは信じられない精度で王の銃の銃口の中に吸い込まれていった
王の銃の中で滝沢の弾丸と王の弾丸が激突する
そして暴発した
王の右手が彼自身の銃の爆発によって内側から破裂した
肉が裂け骨が砕ける
「くそぉぉぉぉぉぉっ!!」
王の絶叫が響き渡った
「……チェックメイトだ」
滝沢は冷たく言い放つ
ドォーン!
最後の一発が王の命を奪った
暴君は静かに床に倒れた
滝沢はその亡骸に一瞥もくれることなくすぐに踵を返した
そしてこのビルのどこかにあるはずの「地下」への入り口を探すために走り出した