八咫烏ファイル


【金虎開発ビル・最上階】
エレベーターに乗る王
スマホを取り出し孫に電話をかける
「もしもし」
『王様!ご無事ですか!』
「こっちにネズミが入り込んだかもしれん」
王は冷静に告げる
「万が一に備えて数名こっちに向かわせろ」
『はっ!ただちに!』
エレベーターが1Fに着いて扉が開く
王が銃を構えながら奥のオフィスへ歩き出した
【1F・オフィス】
爆発の黒い煙が立ち込めている
滝沢は右手に持っていた特殊な銃を見下ろした
コンパクト・グレネードランチャー
ハンドガンの大きさで小型のグレネード弾を撃ち出す八咫烏の特殊兵装
ただし装填は一発のみ
「これはなかなか使えるな」
煙がゆっくりと晴れていく
その先に黒岳の巨大な姿が見えた
戦闘服はズタボロになり全身血まみれ
だが生きていた
「ぐぅぅぅ……」
黒岳は床に手を付きゆっくりと立ち上がろうとしている
はっとなり彼が顔を上げたその時
目の前に滝沢が立っていた
その手には大口径のリボルバー
銃口は寸分の狂いもなく黒岳の眉間に向けられている
ドォォォン!
滝沢のリボルバーの銃口から白い煙が立ち上る
頭を撃ち抜かれ黒岳の巨体は今度こそ完全に生命活動を停止した
「……どんなけタフなんだよお前は」
滝沢は吐き捨てるように言った
その時エレベーターホールからオフィスへと向かう廊下から足音が聞こえた
王 霸だ
先ほどの銃声を聞きつけ急いでいるようだった
王は巨大なオフィスルームに足を踏み入れる
机や椅子は散乱し所々壁も破壊されている
そして部屋の中央に転がる黒岳の亡骸
その奥
闇の中に一つの人影が見えた
王は銃口をその人影に向ける
「誰だお前は」
「通りすがりの殺し屋だ」
闇の中から聞こえてきた声
烏のマスクを着けた男がニヤリと笑った
王は黒岳の亡骸を一瞥する
そして銃を握るその手に怒りで力がこもった瞬間
滝沢が近くにあったオフィスの椅子を王の方へと強く蹴り飛ばした
キャスター付きの椅子が猛スピードで王へと向かう
椅子のせいで狙いがズレる
その一瞬を計算し滝沢は横へと回り込んだ
王と滝沢が同時に引き金を引く
それが試合開始のゴングとなった
二人の壮絶な銃撃戦が始まった