【関東誠勇会・本部事務所】
組長室で坂上 誠が電話をかける
相手は一人しかいない
【獅子堂会事務所】
電話が鳴る
その電話を取ったのは一人の屈強な男だった
梶原 龍二。
関東誠勇会最大最強の武闘派組織「獅子堂会」の組長
そして坂上 誠に絶対の忠誠を誓う若頭だった
「もし」
梶原が電話に出る
『梶原か。今本部がCTの襲撃にあっとる』
坂上の静かしかし怒りに満ちた声だった
「親父!ご無事ですか!?」
梶原は椅子から立ち上がった
「すぐにそちらへ向かいます!」
『待て』
坂上の低い声が制止した
「え?」
『―――全面戦争じゃ』
その一言に梶原は息を呑んだ
「親父!やりましょう!」
梶原の声が喜びに震える
『関東誠勇会の直系全てに連絡を回せ!』
坂上の声が組長室に響き渡る
『浜崎組の仇討ちだ!CT関連の店アジト全てぶち壊して皆殺しにしろぉっ!』
「はい!承知いたしました!!」
梶原は魂からの声で叫んだ
坂上は静かに電話を切った
もう後戻りはできない
【関東誠勇会本部・入り口】
CTの先頭部隊は完全に足止めを食らっていた
関東誠勇会本部の要塞のような狭い入り口
そこは格好の射線だった
関東誠勇会のこのビルはそもそもが「要塞」なのだ
いつか来るであろうこういう襲撃に備え入り口も通路もあえて狭く作られている
多人数での突撃を不可能にするための設計
入り口に殺到するCTの兵隊たち
それを迎え撃つ関東誠勇会の歴戦の幹部たち
狭い空間で銃弾が飛び交い怒号と悲鳴が渦を巻く
CTの先頭部隊は次々と射殺され入り口に死体の山を築いていった
襲撃部隊を率いる趙 剛は舌打ちした
『このままではただ殺られに行くだけだ……』
趙は冷静に周囲を見渡しそして数名の部下を呼んだ
「あのワゴンをビルの壁につけろ」
趙が指差したのは彼らが乗ってきたワゴン車だった
部下たちは即座にその意図を理解した
一台のワゴン車が銃弾を浴びながらも強引にビルの二階の窓の下へと停車する
趙は部下二人と共にそのワゴン車の屋根に飛び乗った
そしてアサルトライフルで二階の窓ガラスを粉々に撃ち砕く
三人はそこからビルの中へと侵入した
その頃二階にいた関東誠勇会の組員たちは一階の援護に向かおうとしていた
その背後から
趙たちの銃弾が襲い掛かった
「ぐわっ!」
次々と倒れていく組員たち
要塞の強みが逆に仇となったのだ
狭い通路で前からそして後ろから
関東誠勇会の組員たちは完全に挟み撃ちにされる形となった
形勢は一瞬で逆転した



