──記憶を失ってた。
──自分のことも、全部。
本屋を出てからの帰り道、大翔の足取りは重かった。
自転車を押す手が、少しだけ震えている。
心のどこかで、ずっとひっかかっていた。
あの夏、紬が来なかった理由。
“バレたくないから行けない”って言ってたのに、
あの日、最後に見たあの目は、どこか覚悟していた気がして──
だから、ほんの少しだけ、期待していた。
「来てくれるかもしれない」って。
でも、姿はなかった。
勝手に落ち込んで、勝手に傷ついて、
結局、自分のなかで“終わったこと”にしていた。
「……全部、俺が勝手に終わらせてたんだ」
記憶を失くした彼女が、今、目の前にいて。
でも、何も思い出せなくて。
何も責めずに、ただ静かに笑っていた。
“思い出してほしい”なんて、言えるわけがなかった。
それでも──
「また、あの笑顔に……会いたい」
電車の窓に映る自分の顔が、悔しそうにゆがんでいた。
彼女の記憶のなかに、自分はいない。
でも、今の自分は、彼女にもう一度恋をしていた。
もしも、もう一度だけ、手を伸ばすチャンスがあるのなら。
……それでも、もう一度、始めてみたいと思った。
──自分のことも、全部。
本屋を出てからの帰り道、大翔の足取りは重かった。
自転車を押す手が、少しだけ震えている。
心のどこかで、ずっとひっかかっていた。
あの夏、紬が来なかった理由。
“バレたくないから行けない”って言ってたのに、
あの日、最後に見たあの目は、どこか覚悟していた気がして──
だから、ほんの少しだけ、期待していた。
「来てくれるかもしれない」って。
でも、姿はなかった。
勝手に落ち込んで、勝手に傷ついて、
結局、自分のなかで“終わったこと”にしていた。
「……全部、俺が勝手に終わらせてたんだ」
記憶を失くした彼女が、今、目の前にいて。
でも、何も思い出せなくて。
何も責めずに、ただ静かに笑っていた。
“思い出してほしい”なんて、言えるわけがなかった。
それでも──
「また、あの笑顔に……会いたい」
電車の窓に映る自分の顔が、悔しそうにゆがんでいた。
彼女の記憶のなかに、自分はいない。
でも、今の自分は、彼女にもう一度恋をしていた。
もしも、もう一度だけ、手を伸ばすチャンスがあるのなら。
……それでも、もう一度、始めてみたいと思った。


