「あの時は当然任務だったから、というのがあったんだ。あの任務を受けることになった時、主計中佐から 『絶対に間違いを起こすな』 ときつく⾔いつけられていた。それが理由だったという訳では無いのだが、本来であれば君と個⼈的に会うことですら君を危険に晒しかねなかった。 君に会うたび俺は理性を保つのに必死で、 本当は君にこの気持を伝えたかったのだが、それで君を困惑させ、 是迄の関係を崩してしまうのではないかと恐れた……それで、俺は君に悟られぬようしらを切り続けた。 何も⾔わなかったし、顔にも出さなかった、 内⼼では⼼を⻤にして、絶対に間違いを起こしてはならないと⾃らに⾔い聞かせてやってきたんだ」
細い膝の上で女の小さな手が震えている。
「そんな……長津さん、そんなことまで考えていらっしゃったんです?」
正博はひとつ頷いた。
「ああ、そうだ……俺は君がどんな立場の女性か弁えているつもりだ。 君に迷惑をかけるわけにはいかないし、⻑年独りよがりだったが……良かったよ。 ⽣きてこのことを直接幸枝さんに話すことが出来て」
清々しい表情を⾒せる正博であったが、⼀⽅の幸枝は不満げな顔をしている。
細い膝の上で女の小さな手が震えている。
「そんな……長津さん、そんなことまで考えていらっしゃったんです?」
正博はひとつ頷いた。
「ああ、そうだ……俺は君がどんな立場の女性か弁えているつもりだ。 君に迷惑をかけるわけにはいかないし、⻑年独りよがりだったが……良かったよ。 ⽣きてこのことを直接幸枝さんに話すことが出来て」
清々しい表情を⾒せる正博であったが、⼀⽅の幸枝は不満げな顔をしている。



