石楠花の恋路

「君と初めて会った時、 俺は確かに上官から命じられて赴いただけの軍⼈だった。 君も覚えていると思うが、あの任務は⼆度と同じ者が担当することのない、⽂字通り⼀度きりの任務だった、それが途中から俺が受け持つことになった……あれは、 俺が専任を申し出たからだ。あの時既に陸軍に⽬を付けられていたから、取引相⼿であると同時に⼤企業の令嬢であり多くの⼈を惹きつける君を危険な⽬に遭わせないことが先決だと考えていたし、 何より、 君を不快にさせる⾃⼰中⼼的な軍⼈を君の隣に付けたくないと思ってしまった。君は俺と任務に携わることを望んでいただろうし、そうだろう?……俺もこの⼿で君を守りたいと望んだ。 初めは任務として、 軍⼈として君を護衛するつもりだった……我ながら護衛には⾃信を持っていたんだ。 任務を続けるうちに、 君がいかに直向きで、 強く、そしてしなやかな⼥性(ひと)かを知ったし、そんな素敵な⼥性(ひと)を男として守りたいと思った。俺はこの数年、 ⼤切な⼥性 (ひと)を……君を守りたい⼀⼼で任務を続けていた。ずっと俺の⼼の⽀えだった……まあ、とにかく、話の収拾が付かなくなりそうだからこの辺りにしておくが」