石楠花の恋路

そういえばそんな会話もしたかと思い出していた幸枝であったが、知らぬところで想像以上に希望を持たれていたことに驚く⼀⽅、あの時聞けなかったあの疑問を再び投げかけてみようかと思いもした。
「少し話し過ぎてしまったかな、幸枝さん、⼿間を取らせてしまってすまない」
「いえ、そんなことは……」
時計を⾒ると昼⾷の時間が近づいていた。
「東京へ帰ろう、来週、いや、 今週末にでも。 ⽇程は改めて調整するから、 少しずつ荷造り
でもしておいてくれ」
急にそっけない表情に戻った正博は、幸枝を居間に残したまま外へ出ていった。