数年間会っていなかったというのに、やはりすらりとした⾼⾝⻑で爽やかな姿形の彼はこれまでと変わっていなかった。 暖炉の前に⽴つ海軍⼠官と⼊⼝で⽴ち尽くす令嬢──⼆⼈は暫し⾒つめ合っていたが、先に動いたのは令嬢であった。そっと居間に⼀歩踏み⼊れた幸枝は、ゆっくりと彼に近づいていく。
「⻑津さん……」
再会を誓い別れ、外地に赴いていた筈の男性がこうして間近に居ることに現実味を感じられない幸枝の眼は、どこか潤んでいて夢⾒⼼地な様⼦である。⼀⽅の正博は硬い表情で背筋を伸ばし⽴っていたが、彼⼥の⼰が名を呼ぶ声の⽢さについ表情が緩む。幸枝は正博の正⾯に⽴ち、彼の腕を撫でてその⼤きな⼿を⾃らの細い⼿に取って切⻑の⽬を⾒て呟いた。
「おかえりなさいませ」
再会を待ち続けた⼥性からのその⼀⾔に⽬頭を熱くした正博は、
「ああ、幸枝さん……」
とほんの少し話すのに精⼀杯で、普段の飄々とした⾃⾝を保てそうにもない調⼦である。幸枝は彼の⾔動や表情から、この数年がいかに重く苦しいものであったのかを悟った。そして、そっと彼の⼿から離した⾃⾝の両⼿を彼の背中に回し、⾃らの⾝体をぴったりと⼤きな⾝体に付ける。
「……暫く、こうしていましょう」
かつて⾃らの⼈⽣に厭気の差したときに彼が掛けた⾔葉である。あの時に受けた安⼼感をもう⼀度、 今度は彼に分け与えたいと、ささやかな気持で抱き付いたのだが、体格差の所為で結局幸枝のほうが正博に抱えられるような格好になる。
「幸枝さん……」
「⻑津さん……」
再会を誓い別れ、外地に赴いていた筈の男性がこうして間近に居ることに現実味を感じられない幸枝の眼は、どこか潤んでいて夢⾒⼼地な様⼦である。⼀⽅の正博は硬い表情で背筋を伸ばし⽴っていたが、彼⼥の⼰が名を呼ぶ声の⽢さについ表情が緩む。幸枝は正博の正⾯に⽴ち、彼の腕を撫でてその⼤きな⼿を⾃らの細い⼿に取って切⻑の⽬を⾒て呟いた。
「おかえりなさいませ」
再会を待ち続けた⼥性からのその⼀⾔に⽬頭を熱くした正博は、
「ああ、幸枝さん……」
とほんの少し話すのに精⼀杯で、普段の飄々とした⾃⾝を保てそうにもない調⼦である。幸枝は彼の⾔動や表情から、この数年がいかに重く苦しいものであったのかを悟った。そして、そっと彼の⼿から離した⾃⾝の両⼿を彼の背中に回し、⾃らの⾝体をぴったりと⼤きな⾝体に付ける。
「……暫く、こうしていましょう」
かつて⾃らの⼈⽣に厭気の差したときに彼が掛けた⾔葉である。あの時に受けた安⼼感をもう⼀度、 今度は彼に分け与えたいと、ささやかな気持で抱き付いたのだが、体格差の所為で結局幸枝のほうが正博に抱えられるような格好になる。
「幸枝さん……」



