「へえ……誰よりも実直で誠実……御家族をよくご存知の小野木さんが仰るのだから、きっとそうなのでしょうね。確かに私は長津さんとは約二年の間定期的にお会いしていましたが、私には長津さんがどのようなかたなのか……何も知らない儘お別れしました。長津さんはご自身については殆どお話しにならなかったし、基本的に冷淡な振る舞いをされるでしょう?勿論、このように私に対して便宜を図ってくだすったことも、しかも何度もそうしてくだすったことも事実ではあるのですが……未だに分からないのです。長津さんは何故こんなに良くしてくださるのでしょうか」
小野木は幸枝の話を聞いて怪訝な表情を見せた。
「冷淡?彼には似合わない言葉ですね……まあ、寡黙なところはあるかもしれませんが」
「彼、私と一緒に居て一度も笑ったことがないんです。それでも、嫌々過ごしているようには見えませんし、寧ろ御厚意で助けていただくくらいには良くしていただいているのですが、いずれにせよ飄々とものをこなすかたなので言葉でも表情でも語らず……何時も長津さんが何を考えていらっしゃるのか、私はいつも見当さえつきませんでした」
ふむ、と顎に革手袋を嵌めた手を当てて唸る小野木には、幸枝の話す正博の様子を想像するのは難しかった。
「はあ、不思議ですね。私の知る限りでは彼は確かに一見すると寡黙なのですが、その心の内は思慮深く、温厚な人なので……人は見かけによらぬものとはいいますが、彼は最もそれを体現した人物かもしれませんね。そういえば、伊坂様はどのようなきっかけで彼を?」
小野木は幸枝の話を聞いて怪訝な表情を見せた。
「冷淡?彼には似合わない言葉ですね……まあ、寡黙なところはあるかもしれませんが」
「彼、私と一緒に居て一度も笑ったことがないんです。それでも、嫌々過ごしているようには見えませんし、寧ろ御厚意で助けていただくくらいには良くしていただいているのですが、いずれにせよ飄々とものをこなすかたなので言葉でも表情でも語らず……何時も長津さんが何を考えていらっしゃるのか、私はいつも見当さえつきませんでした」
ふむ、と顎に革手袋を嵌めた手を当てて唸る小野木には、幸枝の話す正博の様子を想像するのは難しかった。
「はあ、不思議ですね。私の知る限りでは彼は確かに一見すると寡黙なのですが、その心の内は思慮深く、温厚な人なので……人は見かけによらぬものとはいいますが、彼は最もそれを体現した人物かもしれませんね。そういえば、伊坂様はどのようなきっかけで彼を?」



