「町迄はどのくらい掛かるんです?」
「へ、へえ……二十分ほどでしょうか」
使用人はやけに訛った口調でおどおどと答えた。幸枝がそれについて尋ねたところ、その使用人が言うには十三のときに隣県から売られてきて、留守居と他の使用人のもと働いているらしいというのが分かった。彼女は「お姉さん」と呼ぶメード長ら四人の使用人とともに町の一角にある寮で暮らしているそうで、日曜日は暇が出て、月曜日から土曜日の朝食から夕食までが長津家の別荘での仕事時間となっているらしい。窮地に陥った実家を救うことができるのならばと半ば諦めた気持ちながらも、意を決し山梨へ移り長津家に仕えることになったそうだが、彼らには感謝しているという。
「一度だけ御家族のお目にかかったことがありますが、とても優しい人達で……。お姉さんたちも、をぢさんもをばさんも、小野木さんも良くしてくれていて……時々家が恋しくなることはあるけれど、私が此処で働いているならきっと父も母も、妹や弟も元気にやっていると……あっ、ごめんなさい、話し過ぎてしまいました。お姉さんからお客様には自分の話をしてはいけないと言われていたのに……」
失敗をしてしまったという気持ちの表れた顔は、少々の恐れを福見、まだあどけなく見えた。この娘の年齢は判らないが、幸枝と同じ若い娘であることに変わりはない。幼くして故郷を離れ縁もゆかりもない他人の家に仕えているのだ、きっと突然故郷を思い出して涙を流したり、夜に自らの行く末に不安を感じたりしている。
「へ、へえ……二十分ほどでしょうか」
使用人はやけに訛った口調でおどおどと答えた。幸枝がそれについて尋ねたところ、その使用人が言うには十三のときに隣県から売られてきて、留守居と他の使用人のもと働いているらしいというのが分かった。彼女は「お姉さん」と呼ぶメード長ら四人の使用人とともに町の一角にある寮で暮らしているそうで、日曜日は暇が出て、月曜日から土曜日の朝食から夕食までが長津家の別荘での仕事時間となっているらしい。窮地に陥った実家を救うことができるのならばと半ば諦めた気持ちながらも、意を決し山梨へ移り長津家に仕えることになったそうだが、彼らには感謝しているという。
「一度だけ御家族のお目にかかったことがありますが、とても優しい人達で……。お姉さんたちも、をぢさんもをばさんも、小野木さんも良くしてくれていて……時々家が恋しくなることはあるけれど、私が此処で働いているならきっと父も母も、妹や弟も元気にやっていると……あっ、ごめんなさい、話し過ぎてしまいました。お姉さんからお客様には自分の話をしてはいけないと言われていたのに……」
失敗をしてしまったという気持ちの表れた顔は、少々の恐れを福見、まだあどけなく見えた。この娘の年齢は判らないが、幸枝と同じ若い娘であることに変わりはない。幼くして故郷を離れ縁もゆかりもない他人の家に仕えているのだ、きっと突然故郷を思い出して涙を流したり、夜に自らの行く末に不安を感じたりしている。



