幸枝の⾔葉を遮るようにそう告げた正博の顔⾊は無表情に近いものであったが、幸枝はその語り⼝に僅かな虚無感が含まれているのを捉えていた。
「……私にとって、⻑津さんは私を想い守ってくださるだけの存在ではありません。 貴⽅が私を想ってくださるように……私も貴⽅をお慕いしています。それに、 私も……⻑津さんの⽀えとなるような存在になりたいと……そう思います」
頬を⾚らめた幸枝は、もじもじとしながら続ける。
「私も、⻑津さんと同じ気持ですよ」
正博は⾃⾝に向けられた柔らかな笑みの美しさに動揺し、暫く⾔葉を発することもなく⽬前の眩い⼥の姿に釘付けになったような気でいた。
「⻑津さん……?」
⽌まらぬ熱視線に気恥ずかしさを覚えた幸枝は、正博の顔を覗き込むようにして様⼦を伺う。それに気が付いてパッと顔を上げた正博は、
「幸枝さん、もう俺のことをよそよそしく苗字で呼ぶのはよしてくれよ。これからは俺のことも名前で呼んでくれ、俺と幸枝さんとが以前よりも親しくなった証だ」
と優しく語りかけた。この時、 正博は⼼からの穏やかな笑みを⾒せた。これまでの⼈⽣で誰にも⾒せたことのない、緊張感の程よく抜けた真⼼からの表情である。
「え、ええ……」
くぐもったような声を漏らす幸枝は、俯き加減で、やはりもじもじとしている。
「さあ、呼んでみろ」
幸枝は⽬をぎゅっと瞑ったまま、
「……正博、さん……」
と⼩さな声でその名を呼んだ。直後に真っ⾚に染まった頬を両⼿で包み、
「本当に良いのでしょうか」
と震える声で呟いたが、正博は満⾜した様⼦で、
「良いぞ」
と⿊髪を撫でる。幸枝の顔はいっそう熱くなって、その潤んだ視線の先には、元海軍⼠官の柔らかな笑みが浮かんでいた。
「……私にとって、⻑津さんは私を想い守ってくださるだけの存在ではありません。 貴⽅が私を想ってくださるように……私も貴⽅をお慕いしています。それに、 私も……⻑津さんの⽀えとなるような存在になりたいと……そう思います」
頬を⾚らめた幸枝は、もじもじとしながら続ける。
「私も、⻑津さんと同じ気持ですよ」
正博は⾃⾝に向けられた柔らかな笑みの美しさに動揺し、暫く⾔葉を発することもなく⽬前の眩い⼥の姿に釘付けになったような気でいた。
「⻑津さん……?」
⽌まらぬ熱視線に気恥ずかしさを覚えた幸枝は、正博の顔を覗き込むようにして様⼦を伺う。それに気が付いてパッと顔を上げた正博は、
「幸枝さん、もう俺のことをよそよそしく苗字で呼ぶのはよしてくれよ。これからは俺のことも名前で呼んでくれ、俺と幸枝さんとが以前よりも親しくなった証だ」
と優しく語りかけた。この時、 正博は⼼からの穏やかな笑みを⾒せた。これまでの⼈⽣で誰にも⾒せたことのない、緊張感の程よく抜けた真⼼からの表情である。
「え、ええ……」
くぐもったような声を漏らす幸枝は、俯き加減で、やはりもじもじとしている。
「さあ、呼んでみろ」
幸枝は⽬をぎゅっと瞑ったまま、
「……正博、さん……」
と⼩さな声でその名を呼んだ。直後に真っ⾚に染まった頬を両⼿で包み、
「本当に良いのでしょうか」
と震える声で呟いたが、正博は満⾜した様⼦で、
「良いぞ」
と⿊髪を撫でる。幸枝の顔はいっそう熱くなって、その潤んだ視線の先には、元海軍⼠官の柔らかな笑みが浮かんでいた。



