シンユウノススメ

「いじめなんてかっこよくないよ。強さの象徴でもないと思います。心が弱いから誰かを自分より下なんだって見做(みな)さないと不安だからいじめなんてするんだと思います。実際にいじめをしてた人だけじゃない。私達はみんなかっこ悪いです。逃げて、誰かを生贄にして、自分だけの身を守って。このままじゃ私達、正しいことを学べないまま大人になって、大人になってもかっこ悪くてずるいことばっかりしちゃう人間になっちゃうと思います。先生、このクラスにはいじめがあります。助けてください」

「こっ…校長先生にっ…」

担任の先生は、後になって知ったけれど、大学卒業後、教職に就いて三年目で六年生の担任に大抜擢された新米教師だった。

初めて受け持ったクラスでいじめなんて起こったら、その先のことを考えると先生だって怖かったんだと思う。

ベテランの先生とか、いろんな大人に相談してくれても良かったのにって今となっては思うけれど、
自分のクラスにはいじめがある、それが新米教師のクラスともなるとどういう目で見られるか分からない。

メイちゃんは六年生一学期の学級委員長だった。
成績も良くて、他の先生からの人望も厚かった。
自分よりも先にそういう生徒が声を挙げたともなると、教師としての立場も脅かされる。

そういう心理くらいは理解できる。

「校長先生」というワードは小学生には絶大な主語で、そこから順番に親にまでバレることは容易に想像できる。
まさか自分が学校でいじめをしているなんてこと、親にはバレたくないだろう。

「いじめなんて無い!」

そう声を張り上げた主犯格の女子に、一斉に視線が集まった。

「いじめなんて無いじゃん…きょっ…今日からは…そうでしょ?」

引きつった笑顔でムギを、懇願するような目で見つめるあの顔。
一生忘れない。

こくん、って小さく頷いたムギを見て、女子は腰が抜けたみたいにヘナヘナと椅子に崩れ落ちた。