*** その夜、神代家の地下訓練場。 木刀を振るう凛の動きに、わずかな乱れがあった。 父の目が、鋭く光る。 「……心が乱れているな、凛」 「……申し訳ありません」 「任務に“感情”を持ち込むな。対象がどれだけ脆く、優しくても……お前はただの影だ」 その言葉が、胸に重く響いた。 だが凛は―― 心の奥で、もう一人の自分の声を聴いていた。 (でも、私は……彼の隣に、ただ“影”としているだけじゃ、きっと満足できない)