「……何者だ。名を名乗れ」

 「へえ、さすが神代家。反応が早い」


 男はにやりと笑い、マスクを外した。

 凛の目が鋭くなる。


 「……君は、元・特殊任務課。…“楠木 刃(くすのき じん)”」

 「正解。でも、もう“元”じゃねえよ。政府の犬になるのをやめた今、ようやく自由に生きてる」

 「そのために、子どもを狙うのか?」

 「子ども? 違うな。俺が狙ってんのは“象徴”だ。
 悠翔って坊っちゃんは、国の“良い子”って幻想そのもの。…だからぶっ壊す価値がある」


 その言葉に、悠翔が息をのむ。


 「……僕は、そんなつもりじゃ……!」

 「悠翔、後ろに」


 凛が一歩前へ出た。


 「私は神代凛。天城悠翔の私設SPとして、君を制圧する」

 「……面白い。じゃあ、お手並み拝見といこうか!」


 男が飛びかかってくる。
 凛は警棒を真横に振るい、紙一重で悠翔をかばいながら受け止めた。