クラスメイトの女子が手を振る。凛は一瞬ためらいながらも、隣に腰を下ろした。

 悠翔が、ふっとこちらを見る。


 「あ。凛さん、紅茶、好きですよね。ほら、これ、ラズベリーフレーバー。どうぞ」

 「……ありがとう」


 渡されたカップを受け取りながら、凛はその指先にわずかに触れる。


 (この距離が、少しずつ自然になっていく。……それが怖い)


 「どうしたの? なんか、元気ない?」


 悠翔の言葉に、凛はわずかに肩を動かした。


 「……少し、気がかりがあって」

 「……僕のこと?」


 その問いに、凛は一瞬だけ視線をそらした。


 「……違う。けど、君も無関係じゃないかもしれない」


 悠翔は、いつになく真剣な表情になった。
 凛の沈黙を、じっと待つような目だった。

 その視線に、凛は息を呑む。
 彼の瞳が、まっすぐに自分を映している。