「ねえねえ、聞いた? 最近この学校、関係者じゃない人が出入りしてるって」
「まじ? 不審者とか……?」
「いや、噂だけ。でも、生徒の家に変な手紙が届いたとか……」
昼休みのカフェテリア。
騒がしい声の中で、神代凛はトレイに紅茶を乗せたまま、何気なく周囲の会話に耳を傾けていた。
(……情報の出所は不明。警備報告書には記録なし。だが――)
胸の奥に、重い靄が広がっていた。
誰にも気づかれぬように辺りを警戒しながら、彼女は悠翔のいるテーブルに向かう。
悠翔は今日も笑っていた。
優しい、穏やかな笑顔。少し照れながら、同級生とケーキを分け合っている。
「神代さーん、ここ空いてますよ!」



