暫くして、期末と夏期の特講が終わって、漸くしっかりと練習が出来ると思っていたら、それを見計らったように、体育館の点検作業が入り、ぽっかりと放課後の時間が丸々空いた。
俺は意気揚々と彼女の教室へと、迷わず足を向ける。
でも、其処にいるはずの彼女の姿は見当たらなくて。
直感的に嫌な予感がした。
誰に聞いたわけでもなく、俺が足を運んだのは空き教室。
其処には、数名の女子たちがいて、彼女を取り囲もうとしているところだった。
まぁ、所謂稚拙なイジメだ。
「なんで、あんたみたいなカースト底辺の女が、大智くんと付き合わなきゃなんないわけ!」
「大して可愛いくもないくせに!!」
「生意気なんだよ!」
そこまで、聞いて俺はガラガラと教室の扉を勢い良く開けた。
俺の顔を見るなり、真っ青になる女子たち。
「大智くん、あの、これは…」
と、何か言いたげな女子たちの一人。
俺は下を向いている、彼女ぽすんと腕の中に閉じ込めてから、低い低い声を出した。
「あのさ、人の彼女のこと、偉そうに言えるような立場なの?あんたら?大体、カーストどうのこうの言ってる時点で、あんたらの方が底辺以下じゃん。笑わせんなよ。これ以上由希に関わるってんなら、俺も考えるけど?」
「ひっ」
「それから、気安く人の名前呼ばないでくねぇかな?気持ち悪いんだよ」
俺の声聞いて、あまりのその殺気に女子たちは、蜘蛛の子を散らすようにその場を逃げて行った。
「ごめんな、由希。怖い目に合わせて…」
「大智く、ん」
微かに震えている肩をぎゅうっと抱き締めて、そのまま近くの椅子に座らせた。
彼女は、スカートの上に置いた手をぎゅーっと握り締めて、必死で泣くのを堪えているけれど、俺はそんな彼女の辛そうな様子を見てみぬふりすることなんて出来るわけがなく…。
「由希?ゆーき、こっち向いて?」
「や…」
「そっか…じゃあ…」
ふるふると横に首を振る彼女の足元に跪いて、その顔を除き込んだ。
その瞳は、今にも溢れてしまいそうな涙があって。
胸が締め付けられる。
痛い。
痛い。
イタイ。
一体如何すれば、彼女の為に上手く立ち回ることが出来るだろうか。
これ以上彼女を傷付けないように出来るだろうか?
俺は深呼吸を一回してから、彼女切り出した。
「由希、俺といるのつらい?…もう嫌?」
その言葉に対して、がばっと顔を上げた彼女な、とても辛そうな顔をしてから、
「〜なん、で。そんなこと言うの…?大智くんの方が泣き出しそうなのに…?私は大智くんのこと、大好きだもん。誰になんと言われても、大智くんのことが、…大好きだもん」
そうな風に言われて、心底安堵する。
あぁ…本当にこの子のことを好きで良かった…。
「ん。ありがとう。俺も由希のことが大好きだよ」
「……」
「…?」
「そこは、愛してるって言って欲しかったのにっ」
オーマイガー。
助けて、ジーザス・クライスト。
多分この子は、天使と悪小悪魔の間にいます!
俺の心臓幾つあっても足りません!



