そして…。
俺と彼女が付き合い始めてから、また二週間くらい経った頃。
そう、一ヶ月記念日を二人で考えていた頃。
体温を有に越すような、茹だる暑さの中。
すっかり、校内中に馴染んできた時に事件は起こった。
まだ、部活前なのに、一番乗りでやって来ていた彼女は、ジャージに着替えていなくて、疑問が浮かんだ。
「あれ?由希、なんで今日はジャージまだ着てないの?」
「んー…暑いなーっ暑いーって思って」
「そりゃー、そう思ってるから、余計に暑いんじゃん?」
なんとなく、ぽろりと零した言葉。
その後ハッとして、完全アウトだと頭を抱えそうになった。
いや、抱えた。
なんで俺、今こんな冷たい返事したんだ!?
「ゆ、由希…?」
ごめん、と謝ろうとして彼女を向くと、じーっと俺の方をしていた。
怒ってる?
「あ…あの、由希、ご、」
「すき」
「は…?」
「すき、すき、だいすき。大智くん、大好き!」
「や、あの、なんで、今それ、てか、そんなワイシャツパタパタすんの禁止!誰かに見られたらどーすんの?!」
暑いからなのか、恥ずかしいからなのか、少し顔赤くして、彼女はまた「あつーい」なんて、ワイシャツの裾をパタパタしているのを、慌てて止めた。
「てか!なんで今、このやり取り?!いや、俺も由希のこと大好きだけど!」
「だってー…大智くんとなら、こういうのも何時だっていいかなって。すきを連呼すれば大智くんに喜んでもらえるかな?とか暑くなくなるかな?とか…?」
はぁーーー…。
これは、自分の理性の強靭さを褒めてもらいたい。
じゃなかったら、ここで堂々とキスしてた、かもしれないし。
「じゃ、大智くん、私ジャージに着替えてくるね〜」
また後でね、なんて両手でハートのポーズを作りながら、更衣室にパタンと入っていってしまう彼女の姿を見送ってから、俺はそこに撃ち抜かれようにして、勢い良くしゃがみこんだ。
ほんっきで、なんなのあの可愛い生き物は?!
今までの、クールって言われて俺の全てを、彼女という柔い存在で全部、壊された気分だ。
勿論、いい意味で。
「あんな、すき、は、ズルいだろ…」
そんなことを思いながらも、監督と主将に怒られるのは嫌だったから、彼女が出てくるのを待たずに、なるべく口元をキツく結んでから、その場を離れた。
彼女のマネージャーの仕事ぶりは超絶丁寧で素早くて気付きが早くて、パーフェクトだ。
毎年、部員目当で幾人かが(確か記憶してる中でも30人くらいいたように覚えてる…おぼろげだけど…)仮入部してきて、マネの忙しさと覚える事の多さに、大体はすぐに退部していってしまってた。
で、暫くはマネもなくやってきたのだけれど、彼女がマネとして迎えられて部員の全員が、彼女のその仕事ぶりに目を見張り、今では監督や主将にも信頼厚い。
本当は、部活内恋愛はあまり、って感じなのだけれど…俺が調子悪い時、彼女がいればすぐに立ち直れるし、何よりも彼女自身の雰囲気が、部内の環境を良くしてくれる事が分かっているから、今日も和気藹々と練習時間が進んでいく。
「おーい。大智ー!トス上げてくれー」
「おー!」
軽いウォームアップも兼ねて、何本かトス上げをすると、今度はサーブの練習。
段々と、熱が入って来た時…いきなり目の前が体育館の中でぐわん、と揺れた。
「ちょ、おいっ、大智!!」
「誰か!早く冷却スプレー持ってこい!」
「監督!大智がっ!」
「分かった、お前らは救護箱から冷却シートも出して貼ってやれ。俺は今から車を出してくる」
「はいっ!」
「仲野、お前は大智の傍にいてやってくれ。意識が戻ったら安心するだろうから」
「っ!は、はい、」
急なことで、ぐらぐらする頭と息苦しさの不快感。
胸の辺りを掻き毟りたくて、もがこうとすると、その手にひんやりとした感覚に触れた。
「…ん、」
「だ、大智くん?!」
「…?」
「大智くん、大智くん」
暗闇から、開けていく光。
耳障りだった音から変わった、耳に届く風のような声。
そして、俺の手にぽたぽたと零れ落ちる雫。
俺はその先にある光の元へと、ゆっくり手を差し伸べて、
「…由希、泣かないで」
「〜〜っ、だってぇ…」
「由希に泣かれると、まじで、如何したらいいかわかんなくなるから…」
ぎゅーっ、
彼女から握られた、手に思い切り力の入った手を握り返して、「格好悪くてごめんな」
とだけ、返し、俺はまたそのまま意識を手放した。
俺と彼女が付き合い始めてから、また二週間くらい経った頃。
そう、一ヶ月記念日を二人で考えていた頃。
体温を有に越すような、茹だる暑さの中。
すっかり、校内中に馴染んできた時に事件は起こった。
まだ、部活前なのに、一番乗りでやって来ていた彼女は、ジャージに着替えていなくて、疑問が浮かんだ。
「あれ?由希、なんで今日はジャージまだ着てないの?」
「んー…暑いなーっ暑いーって思って」
「そりゃー、そう思ってるから、余計に暑いんじゃん?」
なんとなく、ぽろりと零した言葉。
その後ハッとして、完全アウトだと頭を抱えそうになった。
いや、抱えた。
なんで俺、今こんな冷たい返事したんだ!?
「ゆ、由希…?」
ごめん、と謝ろうとして彼女を向くと、じーっと俺の方をしていた。
怒ってる?
「あ…あの、由希、ご、」
「すき」
「は…?」
「すき、すき、だいすき。大智くん、大好き!」
「や、あの、なんで、今それ、てか、そんなワイシャツパタパタすんの禁止!誰かに見られたらどーすんの?!」
暑いからなのか、恥ずかしいからなのか、少し顔赤くして、彼女はまた「あつーい」なんて、ワイシャツの裾をパタパタしているのを、慌てて止めた。
「てか!なんで今、このやり取り?!いや、俺も由希のこと大好きだけど!」
「だってー…大智くんとなら、こういうのも何時だっていいかなって。すきを連呼すれば大智くんに喜んでもらえるかな?とか暑くなくなるかな?とか…?」
はぁーーー…。
これは、自分の理性の強靭さを褒めてもらいたい。
じゃなかったら、ここで堂々とキスしてた、かもしれないし。
「じゃ、大智くん、私ジャージに着替えてくるね〜」
また後でね、なんて両手でハートのポーズを作りながら、更衣室にパタンと入っていってしまう彼女の姿を見送ってから、俺はそこに撃ち抜かれようにして、勢い良くしゃがみこんだ。
ほんっきで、なんなのあの可愛い生き物は?!
今までの、クールって言われて俺の全てを、彼女という柔い存在で全部、壊された気分だ。
勿論、いい意味で。
「あんな、すき、は、ズルいだろ…」
そんなことを思いながらも、監督と主将に怒られるのは嫌だったから、彼女が出てくるのを待たずに、なるべく口元をキツく結んでから、その場を離れた。
彼女のマネージャーの仕事ぶりは超絶丁寧で素早くて気付きが早くて、パーフェクトだ。
毎年、部員目当で幾人かが(確か記憶してる中でも30人くらいいたように覚えてる…おぼろげだけど…)仮入部してきて、マネの忙しさと覚える事の多さに、大体はすぐに退部していってしまってた。
で、暫くはマネもなくやってきたのだけれど、彼女がマネとして迎えられて部員の全員が、彼女のその仕事ぶりに目を見張り、今では監督や主将にも信頼厚い。
本当は、部活内恋愛はあまり、って感じなのだけれど…俺が調子悪い時、彼女がいればすぐに立ち直れるし、何よりも彼女自身の雰囲気が、部内の環境を良くしてくれる事が分かっているから、今日も和気藹々と練習時間が進んでいく。
「おーい。大智ー!トス上げてくれー」
「おー!」
軽いウォームアップも兼ねて、何本かトス上げをすると、今度はサーブの練習。
段々と、熱が入って来た時…いきなり目の前が体育館の中でぐわん、と揺れた。
「ちょ、おいっ、大智!!」
「誰か!早く冷却スプレー持ってこい!」
「監督!大智がっ!」
「分かった、お前らは救護箱から冷却シートも出して貼ってやれ。俺は今から車を出してくる」
「はいっ!」
「仲野、お前は大智の傍にいてやってくれ。意識が戻ったら安心するだろうから」
「っ!は、はい、」
急なことで、ぐらぐらする頭と息苦しさの不快感。
胸の辺りを掻き毟りたくて、もがこうとすると、その手にひんやりとした感覚に触れた。
「…ん、」
「だ、大智くん?!」
「…?」
「大智くん、大智くん」
暗闇から、開けていく光。
耳障りだった音から変わった、耳に届く風のような声。
そして、俺の手にぽたぽたと零れ落ちる雫。
俺はその先にある光の元へと、ゆっくり手を差し伸べて、
「…由希、泣かないで」
「〜〜っ、だってぇ…」
「由希に泣かれると、まじで、如何したらいいかわかんなくなるから…」
ぎゅーっ、
彼女から握られた、手に思い切り力の入った手を握り返して、「格好悪くてごめんな」
とだけ、返し、俺はまたそのまま意識を手放した。



