翌朝。
ホテルを出るとき、清隆から一本のメッセージが神崎に届いた。
「巡業、おつかれ。髷のことは俺に任せろ。
おまえは、“誰かの心に触れる仕事”をちゃんと続けろ」
その言葉に、神崎はそっと笑い、スマホを閉じる。
「……兄貴にも、感謝しなきゃな」
「え?」
「——“澪を、もっと大切にしろよ”って、言われた気がする」
「……わたしはもう、充分に大切にされてます」
「いや、まだまだ。
これから先、もっと“好き”を重ねていきたい」
そう言って、神崎は澪の手を取り、駅のホームへ向かう。
ひとつの旅が終わり、ふたりの“これから”がはじまる。
その手の温度は、髷と同じように——
静かに、けれど確かに、結ばれていた。
fin.



