「……あ、あの、隣同士の部屋とかでも、良かったんじゃ……」
「兄貴が、“どうせならふたり部屋取っておいたぞ”って勝手に予約してた」
「えっ……!」
「『圭吾の旅は“相撲の修行”だからな』って」
「な、なんの修行なんですかっ」
「さあ……でもたぶん、“人生の歩幅を合わせる練習”って意味なんじゃない?」
「……それ、ちょっと……いい言葉ですね」
神崎は、澪の動揺をからかうこともせず、静かにスーツケースを開けて荷物を整理していた。
その姿に、澪の胸がほんのり熱を帯びる。
(——ふたりで過ごす夜なんて、はじめて)
何も起こらないだろうとわかっていても、どこか緊張する。
でもそれ以上に、隣に彼がいるこの空間が、澪にはただ嬉しかった。



