隠れスー女の恋の行方




「……澪、ちゃんと眠れた?」


巡業当日、始発に近い時間帯の新幹線。
通路側の席に座った神崎が、心配そうに澪の横顔を覗き込む。


「えっ……あ、はい! ……多分、3時間くらいは……」

「……それ、眠れてないっていうんじゃ……」

「だ、だって、緊張して……神崎さんと、地方まで一緒に行くの、旅行みたいで……」

「……ふふ。じゃあ、次からは旅行ってことにしようか」

「えっ……」

「“出張ついでのデート”より、“旅行”のほうが嬉しいでしょ?」



そう言って笑う神崎の目元は、どこか優しさをたたえている。
澪は、頷くのがやっとだった。


新幹線を降りたふたりは、送迎車で巡業会場となる市民体育館へと向かう。
そこで待っていたのは、見覚えのある白衣姿の男性だった。