数日後。
澪の机の上に、そっと置かれたチケットがあった。
それは、来週末の地方巡業の招待券。
送り主は——神崎清隆。
そこには、メモが添えられていた。
「圭吾が誰かと“観に行く”の、悪くないかもな。
次は、前から五列目くらい。
しっかり目、凝らして観てこい」
裏面には、達筆な筆文字でこう書かれていた。
「髷と心は、手で結ぶもの。
眼で、心で、受け止めてやれ」
それはたぶん——髷結い職人であり、兄である清隆の、精一杯の“祝福”だった。
澪はそっと笑って、そのチケットを大事にポーチにしまった。
今度の巡業は、もっと近くでもっと深く——
“ふたりで観る相撲”になる。



