その帰り道、神崎と並んで歩いていた澪は、ぽつりとつぶやいた。 「……優しいお兄さんでした」 「うん。ちょっと不器用だけどね」 「神崎さんも、似てます。優しくて、ちょっと不器用で」 「……不器用って、言われたの初めてかも」 「……でも、それが、好きなんです」 信号待ちで立ち止まったとき、澪は勇気を出して、そっと神崎の手を握った。 何も言わなくても、彼は手を重ね返してくれる。