「……綺麗……」
澪が思わずこぼしたその声に、兄は一瞬だけ手を止め、ちらとこちらを見た。
「……綺麗って言われると、やっぱり、悪い気はしないな」
「本当に、そう思いました。……まるで、祈りみたいでした」
「祈り……か」
清隆の口元が、かすかにゆるむ。
「圭吾も昔は、俺の隣でこんなふうに見てたんだよ」
「えっ……」
「そこの棚の隅っこに、いつも体育座りでな。終わったらぜんざい連れてけってうるさかった」
「っ、ふふっ……聞きました、それ」
「……あいつには、才能あったと思ってる。髷も、指の力も、丁寧だった。……でも」
清隆は言葉を切って、手元を見つめた。



