「……私も、神崎さんのことが好きです」
「……」
「好きで、好きで……今日みたいにすれ違うと、怖くなって、でもそれでも、好きでいるのをやめたくなかった」
「……ごめん。これからは、ちゃんと言葉で伝える。誤解させたり、不安にさせたりしないようにする」
「わたしも……ちゃんと、言葉で伝えます」
ふたりの手が、ぴったりと重なる。
“握る”というより、“重ねる”ように。
ゆっくりと、確かに。
その帰り道、並んで歩く足取りは、どこか柔らかだった。
「……そういえばさ」
「はい?」
「噂のこと、気にしなくていいって言ってたけど……もし何かあったら、ちゃんと言ってね。俺、黙って距離とるとか、もうしないから」
「……はい。そういうときは、ちゃんと……“こわいです”って言います」
「うん。そしたら、俺がそばにいるって、言うから」
そうやって笑い合うふたりの姿は、もう誰が何と言おうと揺るがない。
それほどに、静かで強い“好き”が、そこにあった。



