「でも俺……自分が“誰かといる”ことで、赤木さんが社内で噂されたり、面倒な目に遭ったりするのが……嫌だった。そういうの、俺のほうが耐えられないと思った」
「……」
「だから、少し距離を取った。仕事中は、今まで通りにしようって。……でも、それって、勝手だったよな」
「……神崎さん」
「赤木さんの“好き”を、大事にしたいって思ったのに……俺、自分のやり方で、それを壊しかけてたかもしれない」
(——そんなこと、ないのに)
澪はぎゅっと唇を噛んで、そっと言葉を絞り出した。
「わたし……神崎さんと一緒にいられるだけで、幸せでした」
「……」
「誰が何を言っても……私の“好き”は、神崎さんだけのものです」
「誰が何を言っても……私の“好き”は、神崎さんだけのものです」
その言葉に、神崎はしばらく何も言えずにいた。
カフェのテーブル越しに見える彼の横顔が、少しだけ強張っているように見える。
けれど、それもすぐにほぐれた。
ゆっくりと、彼は顔を上げて澪を見た。



