隠れスー女の恋の行方




「ここの、白玉ぜんざいが最高なんだ。冷たいのと温かいの、選べるよ」

「……どっちにします?」

「赤木さんが選んでいいよ。俺、合わせる」

「えっ……じゃあ……あったかいの」

「了解。俺も同じで」


店員に注文を告げてからも、会話はとぎれなかった。
さっきの取り組みの話。蒼ノ島の勝ち方の美しさ。対戦相手の翠風の粘り腰。そして——


「……やっぱり赤木さんって、丁寧に相撲を見てるんだな」

「え……?」

「土俵際の攻防とか、四つの組み方とか。話しててわかる。俺、ちょっと感動した」

「そ、そんな……圭吾さんほどじゃ……」

「ん?」

「……っ、あ……っ、い、今……」

「あ」


ふたり、同時に気づいて目を見合わせた。


「……すみません、“神崎さん”って呼ばなきゃって思ってたのに……」

「いや、いいよ。うれしかった。名前で呼ばれるの、嫌いじゃない」


神崎の声が、少しだけ低くなる。