「相撲って、勝ち負けも大事だけどさ。その中に、ちゃんと“生き様”が見えるから好きなんだよね」
「……はい。わかります。……私、蒼ノ島関が好きなのも、まさにそれです」
「うん」
「昔、インタビューで……“負けが続いたとき、自分は才能ないって何度も思ったけど、それでも辞めたくなかった”って言ってて」
「……知ってる。その記事、俺も読んだ」
「……!」
「そのときの蒼ノ島の表情、今でも覚えてる。口角が少し下がってて、でも目だけまっすぐで」
「……ほんとに、好きなんですね。蒼ノ島のこと」
「赤木さんには負けるけどね」
「なっ……!」
「でもさ、あんなふうにまっすぐな力士を、こんなふうにまっすぐ応援してる赤木さん、見てて気持ちいい」
「……や、やめてください、そんな……」
「ほんとだよ」
不意に、神崎の手が、澪の手のすぐ近くに置かれた。
指と指が、触れそうで触れない距離。



