春は、香りとともに。




 「……先生……」


 志野子がかすれた声で呼びかけると、惟道は志野子の前に立ち、まっすぐに見つめて言った。


 「志野子さん。……私は、あなたのことが、愛おしいのです」


 心の奥に隠していた思いが、とうとう言葉になってあふれた。


 「あなたが笑うと、嬉しくなる。黙っていても、そこにいてくださるだけで、心が安らぎます。それなのに、あなたが私ではない、他の方と話しているだけで、私は……こんなにも不安になる」

 「……そんな、急に……」

 「自分でも驚いています。でも、これが偽りでないことだけは、確かです」


 志野子は、ふと視線を逸らしそうになったが、惟道の眼差しがそれを許してくれなかった。

 胸の奥がぎゅっと締め付けられるようで、どうにかして冷静を保とうとしたけれど、唇がかすかに震えた。