「まあ、志野子さん、いらっしゃい!」 「この間の仕上がり、ほんとうに丁寧でねえ――」 「今度は、私の襦袢もお願いできるかしら?」 そんなふうに声をかけられるのが、照れくさくも、嬉しかった。 (わたしは、今、確かにここに生きてる……) 届け物を終えて帰る道すがら、ふと風が頬を撫でた。 その先に、惟道が立っていた。