春は、香りとともに。




 「まあ、志野子さん、いらっしゃい!」
 「この間の仕上がり、ほんとうに丁寧でねえ――」
 「今度は、私の襦袢もお願いできるかしら?」


 そんなふうに声をかけられるのが、照れくさくも、嬉しかった。


 (わたしは、今、確かにここに生きてる……)


 届け物を終えて帰る道すがら、ふと風が頬を撫でた。
 その先に、惟道が立っていた。