三日月先輩の声は低くて、ずしんと胸にのしかかるような声をしてる。今もあたしの心臓に重くのしかかってる。

「その子が真涼ちゃんをストーカーしてた犯人ってこと?」

「おそらくな」

「じゃあ今すぐ捕まえにっ」

「待って!」

きゅっと傘を握りしめて、下を見ながら叫んだけどそれでも十分響いた。

「もういいんです、もう依頼は…っ」

「その傘は盗まれたものなのか?」

「え、これは…」

「えーっそうなの!?傘盗まれてたの!?ストーカーもだけど窃盗も犯罪だよ!?」

わーっと驚いた燎くんが目を大きくした。
それで思い出したかのように、ハッとした表情を見せた。

「手紙は?差出人のない手紙は!?」

下駄箱に入ってた手紙のことだ。

「あれもそーなの!?てか手紙はまだ来てるの!?」

あたしの顔を見て、眉をハの字にする。

心配して聞いてくれてるんだ、でも…

「見に行くか」

三日月先輩が立ち上がった。

「真涼の下駄箱、確認しに行くぞ」

「いいです!もう本当にっ、もうお願いしたいと思ってないんで…」

「真涼ちゃん…」

わかってる、これだけ言っといて急にやめてほしいなんてめちゃくちゃだってこと。

「ごめんなさい、わがまま言って…」

わかってるの、だけど。

「わかった、じゃあこれで最後だ」

三日月先輩がドアを開けた、トリックスターから一歩踏み出した。

「これで真涼の依頼は終わりにする」