三日月先輩の声が部屋中にこだまする。
地下室のここはどこよりも響いて、揺れるから。


でもあたしは、もういいよ。

もうここで終わらせたいの。だって…


「なんでケンカしてんの?」

両耳を手でふさいだ燎くんがよたよたと部屋の中に入って来た。

「あのさぁ~ドア閉まってても丸聞こえだからね!?いくら変なとこにあるって言っても近くに誰かいたら聞こえちゃうからね!?自分で変なとこって言っちゃったよ!」

…ここは異空間だから、つい周りのことが見られなくなりやすいとこはあるかも。窓もないから余計に。

「で、何?どったの??」

燎くんが真ん中に入って、三日月先輩の顔を見て次にあたしの顔を見た。

「こいつが依頼取り消せっていうから!」

「違うの、あたしは依頼したくないのっ!」

「わーおっ、立場逆転してるし」

床に落ちていた傘を燎くんが拾った。こんな晴れた日に傘なんて不思議そうな顔をしたけど、あたしの手にも傘があったからさらに首をかしげながら壁に立てかけた。

「真涼ちゃんはなんでもういいの?あんなに言ってたのに」

「…もうストーカーされてないから」

「本当かよ、それ」

「…。」