傘を返しにトリックスターに来たはいいけど…

なんか入りづらいかもしれない。
昨日あんなこと言って出て来ちゃったもん、どんな顔でこのドアを叩けばいいのか…

もう三日月先輩来てるかな?
まだかな…

どうしよう、傘だけ置いとく?こっそりと傘だけ…

「真涼」

「ぎゃっ!!!」

「うるせぇ声だなぁ」

「三日月先輩っ」

はぁ~って重めの息を吐きながらスッとあたしの隣を通り過ぎてドアを開けた。
まだ燎くんは来てないみたいで、三日月先輩がカチッと電気をつけた。

「何つっ立ってんだよ、ささっと入れよ」

こそっと傘置いて行こうと思ったんだけどな、せめて燎くんにいてほしかったし。


三日月先輩と2人は、今日はちょっと…

やっぱ傘返して今日は帰ろっかな!?


「真涼、傘」

だけどなぜか先に三日月先輩から傘を差し出された。

「え、なんですか?これ…」

三日月先輩に返そうと思ってた傘をまた渡しそびれて、目の前に出された傘を手に取った。

「あ、これっ」

「真涼に返してといてほしいって、さっき預かった」


そう、これはあたしの傘!

ずっとあたしが使ってた傘…!


「知らない女が俺に渡して来た」