ウェルカム・トゥ・トリックスター

ふぅっと息を吐いた理事長は愛おしそうな目でテープレコーダーを見つめ、カセットテープを取り出した。

これで解決したのかな?これで全部…

カセットテープを持ったまま放送室から出て行く、もう三日月先輩も言うことがないのか黙ったままだった。

「そうだ、世伊」

放送室から一歩出た理事長が振り返った、ニヤッと笑って。

「紅茶はうまかったか?」

さっきのキャッキャした表情とは大違い、すごい悪い顔してる。それにまた三日月先輩がイラッとした。

「めっちゃくちゃまずかったわ!!!」

「そうかそうか~、喜んでくれてよかったなぁ」

「喜んでねぇよ!」

「でも飲んだんだろ~?」

「ぶっ飛ばすぞっ」

あ、親子喧嘩2ラウンド始まった。

どうすんの、これ?もう依頼関係ないよね?

「真涼ちゃん真涼ちゃん!」

ちょっとちょっとと手招きをする燎くんに呼ばれた。右手を口に添えてあたしの耳元にこそっと近づいて。

「なんで理事長はせーくんの嫌いな紅茶を差し入れるんだと思う?」

「え?」

それは前にも聞かれた。
嫌いなものだから嫌がらせ?って思うけど、なんの嫌がらせかはちょっとわかんない。

「…その答え、燎くんも知らないんだよね?」

「うん、知らない!でもオレの予想は…」

さらにあたしに近づいて小さな声で言った。