ウェルカム・トゥ・トリックスター

「いやぁ恥ずかしい、照れるな~!ふみ先生困るなそんなこと~~~!」

「てめぇふざけんな…っ」

「ふみ先生に話したことまだ覚えてるとはなぁ!」

「お前…っ」

三日月先輩がだいぶイライラしてる。チッて舌打ちした。

その気持ちもわからんくはないけど落ち着て、てゆーか理事長も落ち着いて!

「認めるんだな!“初恋”の相手がっ」

「母さんは私の初恋だよ」


………え?


あれだけカッとなってた三日月先輩もはぁ?って顔してた。あまりに理事長が照れくさそうに話すから。

「恋なんて興味なかった学生時代、親の決めた婚約者にも興味がなくてどうでもいいと思ってめちゃくちゃにしてやろうと思ってたんだが話してみたらおもしろい子でな〜!」

でも話す姿はうれしそうで、ウキウキで話してる。

「体育祭の時なんかな!女の子たちはみんなパン食い競争を嫌がったんだよ、変な顔になるのが嫌だって!でも清華(母さん)はあのパン屋さんが作るパンは美味しいからって立候補して1位でゴールしたんだよ!」

三日月先輩のお母さんもなかなかの人だなぁ…普通嫌だよね、恥ずかしいもん。

「こんな子いるんだなぁと思った時にはもう、あれは恋だったな~!」

……。

だけど、そんな清華さんのことをほんのり頬を染めて話す理事長はすてきだなぁって思った。

「だから…私の初恋は紛れもなく清華だ。そのことをふみ先生は覚えていたんだろうな、大切な思い出だから」

こんなに清華さんのことを想いながら話す表情にきっと嘘はないよ。

「清華は今でも大切な人だよ」

理事長の初恋は三日月先輩のお母さんだ。