ウェルカム・トゥ・トリックスター

理事長が指を差した、テープレコーダーに入ったカセットテープを。

「そこに録音してある、それが証拠だよ」

……。

自分の声も録音できるってさっき三日月先輩が言ってた、じゃあこのカセットテープは…

「深谷くん、ボタン押してみて」

「あ、はい!」

燎くんがカチャッとボタンを押した。なんだかすごくアナログな音にパチッって瞬きしちゃった。

ジーっと音が鳴り出してくるくるとカセットテープの穴の開いたところが回り出す、ザザーっと雑音の中で女の子の声が聞こえた。

『あ、録音ボタン押しちゃった!れーじくんもう始まっちゃったかも、なんか言って早く早く!』

ふみ先生?にしては若い声だなぁ…

『あ、わたしの名前は宝来清華(ほうらいきよか)です』

誰!?知らない人だ…

「母さん…?」

えっ、お母さん!?
これが三日月先輩のお母さん…

『ほら、れーじくんも自己紹介してよ!』

『え~、いるかなぁ』

『いるよー!だって決意表明だもん、ほら早く早く!』

『えー…、三日月怜士です』

『ふみ先生も!』

『私はいいわよぉ』

『いるよいるよ!だってこれはれーじくんの誓いのテープなんだもん!』

雑音で聞き取りにくいけどその奥からちゃんと声が聞こえてる。それはうれしそうでたのしそうで、あの写真みたいだ。

『れーじくんがいつか三日月学園の先生になるって誓いの立会人だよ、わたしたち!』