ウェルカム・トゥ・トリックスター

燎くんがテープレコーダーのボタンに触れるか触れないかのところで背後から低くて太い声がホコリっぽい放送室に響いた。
ビクッて体がふるえて、そのふるえのまま振り返った。

「コソコソ嗅ぎまわってると思っていたよ」

理事長…!!?

「私が気付かないとでも思ったか、世伊」

バレてる…!!!
全部バレてるんだ…!

あたしたちがここへ来た理由も、ここで何をしようとしていたのかも全部…っ

理事長とは話したことはない、先生と違って授業することもないし朝礼とかはいつも校長先生の話しかないし。だから理事長のことはあまり知らなくて、今ちゃんと声を聞いたぐらいだけど…


オーラがやばい。


三日月先輩のお父さんって感じの目に三日月先輩のお父さんって感じの表情、声、態度…

ほぼ三日月先輩だけど怖さは5倍くらいある!!!


ギロッと三日月先輩の方を見て、順番にゆっくりあたしたちの顔を見た。

もう逃げられない、今絶対顔確認してる…


これどうなっちゃうの!?


「それは“あの”カセットテープか?」

…っ

指をさす理事長の太い人差し指が、ぐっと胸に刺さるみたいに。

「そんなもの探してたのか」

やばいっ、どうするの!?どうすればいいの!?

ぎゅぅっと目をつぶる、覚悟を決めて。
どうにかしてくれますようにって祈りながら。


ねぇ三日月先輩…!