「真涼ちゃん、智くんは大丈夫だった?」

「えっ」

あの日、同じように帰りが遅くなった智くんに聞かれてた。

“ストーカーって何の話?”

不安げな顔であたしを見て、自分のことみたいに心配してくれた。

「う、うん!智くんには言ってなかったからあのまま一緒に帰って話したよ」

「ごめんね、オレが大声で叫んじゃったから」

「いいよいいよ、燎くんも心配してくれてるとわかってるし!」

「真涼ちゃん…!でもほんとに何度でも言うけどっ」

「燎黙れ」

三日月先輩の低音にピタッと燎くんが止まった。きゅっと口をつむんでしーっと人差し指を立てる仕草を見せる。

「廊下に響くだろーが」

そうなの、今はそれどころじゃないの。

あたしもしゃべってたけどそれどころじゃなくてめっちゃ緊張感…!

「今日こそ狙うぞ」

ここは生徒が来ることは少ないA棟、しーんとする空気は息をするのもためらうような緊張感に包まれている。

ひっそりと壁の角に隠れながら、チラチラと覗いてひたすらに待つ…


理事長室の扉が開くのを。