「え?あたしは…」

下駄箱に着いたから、スニーカーを取り出そうと思って扉を開けた。古川と深谷は名簿が前後だから燎くんの下駄箱はあたしの上になる、だから何気なく顔を上げた瞬間目に入ったんだと思う。

「それ何?クッキー…?」

あたしの下駄箱に入っていたプレゼントに。

「真涼ちゃんっ、触らない方がいい!」

「…っ」

目を丸くするあたしを見た燎くんがあたしの手を掴んだ。グッと引っ張られて、燎くんの手にも力が入っていた。

「せーくん!せーくんちょっと来て!!」

隣の隣の隣…のまだ隣、マンモス校の下駄箱は広くて3年生の下駄箱はあたしたちの下駄箱から遠い。燎くんがあわてて三日月先輩を呼びに行った。

「せーくん見てこれっ」

「なんだよ」

「これ、クッキー!たぶん手作りのっ、真涼ちゃんの下駄箱に入ってた…!」

腕を引っ張られ連れて来られた三日月先輩が眉間にしわを寄せる。じっとクッキーを見つめて、ゆっくり手に取った。

「せーくん大丈夫!?むやみに触らない方がっ」

「大丈夫だろ、食うのはやめた方がいいけどな」

シンプルな丸い形をしたクッキーが数個入っていて、きゅっとリボンで結んであった。友達同士であげる、そんな手作りクッキーだった。

「真涼、心当たりは?」

「え…っ」

「これ絶対あれでしょ、あれしかないでしょ!」

「燎うるさい。ご丁寧に真涼ちゃんへって書いてあるんだ、この文字に心当たりはないか?」