私立三日月学園の理事長、三日月怜士(みかづきれいじ)
の1人息子である三日月世伊先輩はそれはそれはうちの学校では超有名人だから!

あたしでも知ってるぐらいだもん、だからここへ来た時びっくりしちゃったし!

てゆーかあんなオーラ全開でにらまれたらびっくりするから!!

「このソファーもカップもテーブルもついでに紅茶も理事長からの差し入れ~♬」

理事長、子供に甘いタイプなのかな?ここだけ異空間すぎるよ…

「オレらのお願いした通り作ってもらえたのかここなんだ♬」

「すごいね…」

語彙力なさすぎてこんなことしか言えないし。だって普通にすごいんだもん。

「そんなに気合い入れて作ったのに隠れ部なんて言われるから気に入らないってこと?」

「それはせーくんがっ」

と言いかけたところで、三日月先輩がギロッと深谷くんをにらみつけたから何事もなかったみたいに持っていたカップに入った紅茶をゴクッと飲んだ。

三日月先輩がトリックスターって名前を付けたのかな、でも正直トリックスターより隠れ部のがマシな気する…
トリックスターってなんかちょっと、恥ずかくないかなぁ。

「でも隠れてるぐらいがいいかなぁって思うけどね」

「え?」

深谷くんがもうひとくち紅茶を飲む。カップに入った紅茶を見つめて、ふぅっと息を吐くみたいに目を伏せて。

「ここは本当に悩みを持った人しか来れないから」

「…そんな仕掛けがあるの?」

「そーゆうものだからね」

「?」

なにそれ、ファンタジー?

そんな感じだから全然見付けられてないんじゃないのかな、でも本当に悩みを持った人しか寄せ付けないんだとしたら…

「で、古川さんの相談は?」

「聞くな燎!」

そうだ、トリックスターの生い立ちを聞きに来たんじゃないんだ。

あたしはここに悩みを聞いてほしくて来たんだった。


あたしの相談したいことは…


「ストーカーをやめさせてほしいの!」