さっきまで俯いていた女の子が顔を上げた、その言葉に三日月先輩も表情を変える。

「依頼内容は?」

「え?」

「依頼はなんだ?どんな相談内容か話せよ」

「相談内容は…」

女の子の膝の上に置いた手にぎゅーって力が入った、スカートを握りしめてすぅっと息を吸った。

「おばあちゃんの思い出を取り戻してほしいんです!」

おばあちゃんの思い出…?

あ、三日月先輩の眉間のしわが増えた!ぎゅーってすごい集合した!

「なんだその相談は…」

「おばあちゃんの記憶が少しずつなくなってるんです、…いつも同じ話をしててもうわたしのことも忘れちゃってるかもしれなくて」

「だからなんだよ、それと理事長の何が関係あるんだよ」

うわーイライラしてるなぁ、体調悪いこともあってイライラがやばい。あたしのせいで申し訳ないけど今は口を挟みたくないのごめんね、って心の中で手を合わせた。

「おばあちゃんの初恋の思い出を探してほしくて…」

「初恋の思い出?」

「はい…いつもうれしそうに話してくれる初恋の思い出があるみたいで、そのことだけは今も覚えてるんです。あの人は今元気かな、いつかまた会いたいなって何度もわたしに…」

一瞬視線を下に向けて息を吐いた。きゅっと握った手と瞳に力を込めて、前を見る。


「その人の名前が三日月怜士(みかづきれいじ)、うちの学校の理事長なんです」