三日月先輩の方を向くと目が合った、目つきは悪かったけど眉間にしわは寄ってなかった。

「…してませんけど」

「ふーん、そうか」

スッと視線を前に戻して、意味深な返事だけ残された。

え、どうゆう意味?
何かあった?三日月先輩が何か思うようなこと…

「燎が真涼の彼氏に会ったって言ってたぞ」

「彼氏?」

なんていないけどなぁあたし。
彼氏って誰それ、もしかして…

「智くんは彼氏じゃないですよ!?ただの幼なじみで、家が隣のっ」

「へぇ、じゃあ真涼の片思いか?」

ニヤッと笑った、上から見下ろすみたいに笑った。


わ、笑った~~~っ!?


「そんなんじゃないですっ、昔から仲のいい幼なじみで!だからっ、その…っ」

「何必死になってんだ?別にそんなことどーでもいいけど」

むかっ、むかつく…!!

急に表情筋仕事しなくなったし!

「じゃ俺は帰る」

どうぞどうぞお帰りください、もうとっとと帰ったらいいのに突っかかってこないでっ

「…って、なんですか?」

開いた傘を差し出された。無表情でじっと見て来るから何を考えてるのかさっぱりわからない。

「傘、ないんだろ」

「え…ないですけど、でもこれ三日月先輩のですよね?あたしがもらったら三日月先輩のが…」

なくなっちゃうよね?

でもグッて差し出された傘はあたしに持っていけと言わんばかりに押しが強いから。

「雨嫌いじゃねぇから」

「え?」

「じゃ」

「ちょっと待ってくださいよ!」

無理矢理傘を押し付けて三日月先輩が雨の中向かうように走って行く。

「三日月先輩!?ちょっとあの…三日月先輩っ!?」

行ってしまった、ザーザーの雨の中雨を体に受けながら走って…
案外足早いんですね。
じゃなくて、いくら雨が嫌いじゃないからって濡れて帰る人いないと思います。

って、これどうすれば…

「…いいのかな、借りちゃって」