「海老名花音が新井のために嘘ついて牛丼食べに行く理由はさっぱりわかんねぇわ」

「え!?それわかんないんですか!」

「どうやったらその思考回路になるのか全然わっかんねぇ」

「恋する乙女心ですよ!?」

「なんだそれ」

フンッと息を吐いて、相変わらずにらむみたいな目をしてる。


これはたぶん元々そんなお顔なのかな、三日月先輩の。

そんな人なんだなって少しだけわかっちゃった。


パチッと三日月先輩と目を合わせれば、フッと得意げに笑うから。

「三日月先輩、お願いがあります」

案外この場所も悪くないなって思っちゃった。

どこにあるのかひっそりしすぎて見付けられない、埃っぽくて小さな部屋の中には異空間みたいな景色が広がって。

「断る」

「まだ何にも言ってませんけど!?」

ここにいたら何かが変わるんじゃないかなって、変えてくれるんじゃないかなって思ったの。

ついでに言うと変な名前だけどね、トリックスターなんて。